省力化投資補助金
2024年7月からスタートした新しい補助金「中小企業省力化投資補助金」の紹介です。売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入が補助されます。
最大の特徴
これまで国・県・市で多くの補助金が運用されてきました。中小企業の定番と言えば「ものづくり補助金」「小規模持続化補助金」「事業承継補助金」などがありましたが、これらの補助金と大きな違いがあります。
それは“事業計画書が不要”ということです。これまでですと、自社の状況やそれを踏まえた取り組みについて事業計画書に記載して、それを審査員が審査するという仕組みでした。この仕組みは問題点が多く、有識者から指摘が上がっていました。
- 事業計画書の良し悪しだけで採択が決まる
- 事業計画書を書くために時間とノウハウが必要
- 計画書の審査に審査員の主観が入る
そのため、当社のようなコンサルタントに計画書の代筆を依頼することが一般的になっています。そのおかげで当社もお仕事を頂いている訳ですが、人から見ればお金の使い方として良くない、と言われることもあります。
こうした状況も踏まえてかはわかりませんが、この補助金では事業計画書を必要としません。その代わりに"設備カタログ"が用意されており、そこから選ぶ方法になっています。
使い勝手は良いのか?
カタログギフトのようにカタログから選ぶだけなので使い勝手が良いように感じますが、はたして実態はどうなのでしょうか?メリット・デメリットの両方がありますが、個人的にはデメリットの方が大きいように思います。
- 設備の選択肢が極端に少ない
カタログに多くの設備が登録されていますが・・・圧倒的に少ないです。設備メーカーがカタログへの登録を申請→審査される訳ですが、結局そこには審査が発生していて遅延が発生しています。また、メーカーが申請しなければ登録されない訳なので、本当に欲しい設備がカタログに載っていないことがほとんどです。
掲載が少ないということは、掲載されている設備には問い合わせが集中するということで、設備メーカー側がパンク状態になっているようですし、そうした対応ができるメーカーしか登録できない事にもつながります。
- オーダー系の設備は載ってこない
製造業のコンサルティングをする立場から言えば、製造現場の省力化を図るには単に設備を導入するだけでなく、搬送設備やセンサー・カメラを組み合わせたライン物が必要になってきますが、そういったものは対象になりません。この補助金でメイン機部分を導入して搬送部分は別で投資ということもあり得るのですが、その別の部分は補助されません。前述の通りカタログ掲載のメーカーはパンク状態にあり、面倒な対応はしたがらないことも想像できます。
当社としても顧客に提案できる設備が少なく、開始して1か月以上が経ちますが、今のところ活用した企業はありません。とは言え、欲しい設備がカタログに載っていれば比較的簡単な手続きで設備導入できるので、その点ではメリットが大きいと思います。
活用案と注意点
【飲食業】
◎スチームコンベクションオーブン
調理作業を自動化・無人化することで、接客業務に注力することが期待できます。小規模企業の生き残りは「有人接客の強化によるファン化」です。※大手のように、自動配膳ロボットなんて入れてはいけません!
また、隙間時間に食品を製造してECで販売するなどで、新たな収益事業を作ることも可能です。
△自動発券機
ワンオペで多くのお客さんをさばくためには必要ですね。スタッフ数に対して客席数が多い店舗で有効になりますので、店舗の形態に合わせて導入を検討されると良いです。
×自動配膳ロボット
小規模店では絶対に入れないでください。最強の付加価値である“接客”する機会が減ってしまい、ファンが減少し常連客を失う原因になりかねません。また、店舗レイアウトの自由度も下がります。
【小売業】
○掃除ロボット
大規模な店舗を構えている場合は良いと思います。家庭用の掃除ロボットに比べて、清掃能力が高く、稼働時間も長いのが特徴です。
【宿泊業】
△自動チェックイン機
ホテル業のように、部屋数が多い場合には効果的です。ただ、小規模の場合にはシステム連動なども必要になり運用が難しいです。また、前述したとおり接客機会が減少することは、付加価値の低下にもつながります。
【印刷業、新聞業】
○丁合機
新聞に広告に差し込んだり、DM発送をする場合の設備です。バックオフィス業務の効率化はどんどんしましょう。
【建設業】
○デジタル測量機
既に相当数が普及していると思うのですが、補助されます。
【製造業】
◎AGV(自動運搬ロボット)
材料、仕掛品、完成品を、人に変わって工場内を運搬するロボットです。製造現場において”歩行”は悪だとされており、それを解消する設備です。効率的な運用には仕組み・システムの構築が必要なので、導入のハードルはかなり高いですね。
◎検品装置
中~大ロット生産している工場においては効果を発揮します。
◎自動倉庫
効果は大きいですが、大きな投資額になりますしシステム構築が必要になります。
製造業だけでなくEC業などでも在庫保管に活用できそうですね。
総括
カタログを見ると、中小・零細企業が活用できそうな設備が少なく、20~30人以上の企業規模向けの補助金のように感じました。活用しやすいのはスチームコンベクションオーブンくらいでしょうか。従来型の補助金の運用が難しくなっているのは理解できますが、事業者ファーストの補助金制度を作ってほしいものです。
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