「何のために経営していますか?」と経営者に聞くと様々な答えが返ってきますが、ゴーイングコンサーン(企業継続)が前提だと考えると「儲けるため」「お金を稼ぐため」という考えは返ってくるべき答えだと思います。赤字のままではいずれ倒産してしまいますし、現金が無ければどんなに素晴らしいビジネスモデルでも倒産してしまいます。
それにも関わらず、多くの経営者は現金の増減に無頓着で、とどのつまり、経理担当者から残高不足だと言われて初めて焦る、、、なんて事もあります。その時点で借入が出来れば良いのですが、そのような場合、赤字が続いている可能性が高く、銀行もすぐには貸してくれません。
現金・キャッシュが全て
どのようになったら倒産するか?それは、現金が足らなくなった、です。当たり前のことですが、理解していない経営者がとても多いように思います。
企業A:無借金経営で、現金残高100万円
企業B:借入金1億円で、現金残高1億100万円
どちらが強い企業でしょうか?価値観はそれぞれですが、私は企業Bだと思います。企業Aの場合、100万円以上の赤字になれば倒産してしまいます。こんな簡単な事すら理解せず、借入を悪だと思い込み、手許現金を薄くしている経営者が本当に多く感じます。
決算書の実例
現金の大切さ、資金繰りの大切さを理解していない企業のよくある決算書の例をお見せします。
資金繰りの状態を分かりやすく表す指標に「流動比率」があります。直近で支払わないといけない債務を、手元資産でまかなえているか?という指標です。
【計算式】流動資産合計 ÷ 流動負債合計 × 100
この事例では
流動資産合計=900万円
流動負債合計=1100万円
なので、約81.8%になります。
これは危険な状態です。“手元資産を全て使っても、支払いを賄えない”という事になります。最低限として、100%以上、安全圏としては200%以上が理想です。みなさんの決算書を見て計算してみて下さい。
余談ですが、決算書というのは「ウソを付いています」。例えば商品が100万円となっていますが、販売が出来ないデッドストックであれば、手元資産とは考えられません。
売掛金といっても、明日回収(現金化)できる物もあれば、再来月になるもの、場合によっては不良債権になっているものまであります。正しい経営判断をする為には、正しい決算書にする必要があります。顧問税理士と相談して、不良在庫はすぐに欠損で落とす。不良債権も貸倒れとして処理して、クリアな決算書を目指しましょう。
資金繰り改善の具体策
資金繰りの改善には、簡単にできてしまう物もあります。「現金を増やすためには利益を上げるしかない!」と考えている方も多いのですが、損益の改善には時間を要します。場合によっては、今日・明日には現金が必要な場合もあります。
①商品を現金化する
叩き売りの価格でも良いので販売します。特に不良在庫は、廃棄にもお金がかかるのでプラスになるのなら積極的に販売します。
②事業に直結しない資産を売却、積立の解約
ゴルフ会員権、未活用の土地・設備の売却、積立保険の解約。
以前やっていた事業の保証金や出資金などが残っている場合もあります。
③売掛金サイトの短縮、買掛金サイトの延長
今回の例で売掛金のサイトが翌々月払いだとすると、1ヵ月250万円(500万円÷2ヵ月)の売掛金だと予想されます。サイトを翌月払いにできれば、250万円のキャッシュを獲得できる事になります。これだけで流動比率100%越えです。
④借入(資金調達)
金融機関から借入を検討しましょう。資金繰りが厳しくなってからではNGです。余裕がある段階で運転資金として借りておきます。使わずに持っていれば安心です。
⑤ムダなキャッシュアウトを減らす
・積立型保険の廃止
・定期積立の廃止
・携帯電話の見直し
・ネット専用バンクによる振込手数料の節約
・顧問税理士、顧問社労士の契約料見直し
⑥節税をやめる
節税対策と言って、保険の加入、消耗品や資産の購入はやめましょう。
たかだか35%くらいの法人税の為に、いくらのキャッシュを使うつもりですか?
例えば、100万円の利益を減らすために、100万の設備を買ったとします。一括償却出来たとして、課税利益を100万円減るので、100万円×35%=節税額35万円!
35万円のキャッシュアウトを止める為に、100万円のキャッシュアウトをしている。。。本末転倒ですね。節税は損失の先取りでしかありません。先々のキャッシュより、足元のキャッシュが大事です。
⑦元本返済の停止
万が一、新規の借入が出来なければ借入元本の返済を停止(リスケ)する交渉をしましょう。
リスケに抵抗感を感じる経営者も多いように思いますが、貸してくれないなら止めるしかありません。毎月30万円の返済をしていれば、元本停止によって30万円のキャッシュアウトを止める事に繋がります。こまごまと経費の見直しをするよりも効果が高いです。
もちろん勝手に止める訳にはいきません。メインバンクとの交渉・改善計画書の提出(リスケ開始から3ヵ月以内を目処)などで、誠意をもって対応する必要があります。メインバンクがOKしてくれれば、基本的にサブもOKしてくれます。
ざっとこのような具体策があります。とにかく、経営者は現金を最大化する事を最優先にすべきです。もちろん、本来は本業で適切な利益を稼いで内部留保を溜めていくべきなのですが、場合によっては緊急オペが必要なときもあります。オペは危険を伴いますし、取引先や金融機関との交渉も必要になってきますので、日頃から健全な資金繰りができるように、予防治療しておくことがとても大事です。
事業拡大には財務戦略が不可欠です。まずは決算書から今やるべき財務戦略を検討する必要があります。初回の相談は無料ですのでお気軽にご相談ください。お問い合わせフォームからご連絡下さい。
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