コンサルタントは会社のお金事情にアドバイスをする仕事です。同じようにお金事業にアドバイスをする仕事として、税理士(会計事務所)があります。最近強く思うのが税理士の使い方、選び方で経営って大きく変わるという事。単に決算書業務だけをやっている税理士と付き合っていても会社は成長しないと思います。
税理士の役割
あまり大きなことを書くと税理士さんから怒られますが、支援先の決算書を見ると「税理士は何をやってんだ!」と言いたくなることが多くあります。例えば、こんな決算書(BS)です。
<会長>
・70歳。第一線は退いている。
・役員報酬として年240万円受け取っている
・株式を100%保有している
・体の不調を訴えており、通院が欠かせない
・役員借入は全額会長からだが、返って来なくても良いと考えている
<社長>
・45歳。20年間従業員として働き、3年前に社長に就任した。
・貯蓄は1000万円程
<会社>
・直近の損益は売上1億円、粗利6000万円、経常利益▲200万円ほどが続いている
・会計は税理士任せで決算時にだけ報告を受けている
・事務所兼店舗の老朽化がひどく、建て替えが必要になっている。
・建て替えに5000万円必要だが銀行からは前向きな返事が得られていない
税理士からは「経費を削減して収益性を上げ、経営を改善しましょう!」と言われているようです。こんな誰にでも言える事を言うために税理士はいる訳ではありません。会社のお金に一番近い立場にいながら、適切な財務アドバイスをしない税理士には、とても腹が立ちます。
さて、事業を拡大したいと考えている社長に対して、どんな提案ができるでしょうか?もちろん、経営に正解はありませんがやるべき策は色々とあります。
相続・贈与対策
70歳を超えた会長に対して、これを口にしない訳にはいきません。万が一会長が無くなった場合、、、
①役員借入:相続税がかかる
②株式:債務超過なので税務上の価値は無く、相続税は掛からない
①は払いたくないですよね。何百万円級の相続税がかかる可能性があります。
そういう意味では、役員借入を減らす必要があります。
<パターン1>全額を債務免除にする
分かりやすいのですが、債務免除にすると税法上は「利益」と扱われるので、利益に対して法人税が課せられます。BSの見た目は良くなりますが、法人税分のキャッシュアウトが発生します。
元々キャッシュ(流動資産)が潤沢では無いので、心もとなくなります。
<パターン2>会長への役員報酬240万円を止めて、返済として240万円をキャッシュアウト
キャッシュアウトの額は変わりません。
役員報酬240万円分の利益が出ますが、赤字と相殺される程度なので法人税の負担も少ないです。
ただ、完済に13年程掛かってしまいます。
目先の対応としては、すぐにパターン2の実行ですね。後回しにしても何のメリットもありません。
5000万円の借入を可能にする
役員借入を徐々に減らしていく方法もありますが、経営において時間は最大の資産です。経営者の希望である、新社屋建設によって事業拡大をするには、早々に5000万円の借入を実現する必要があります。
その実現において最大の足かせは、「借入残高」と「債務超過」です。
<解決策>DES(Debt Equity Swap )=デッドイクエティスワップ
あまり聞きなれない言葉だと思いますが、和名「借入の資本化」です。
つまり、役員借入を株式に置き換えるという事です。
役員借入3000万円を株式(資本金)3000万円にする訳です。
するとこうなります。
過去の利益の積み重ねである「利益剰余金」はそのままですが、資本金が増える事で債務超過が解消されます。(債務超過が解消すると株価が付いてしまうので、現時点で会長が持っている株式は、事前に社長かお孫さんに贈与しておくと良いですね。)
株価によっては発行株式に対して法人税が発生する可能性もありますので注意は必要です。
新たに発行された株式に対しても相続税が発生する可能性がありますが、株式の承継にのみ適用できる「事業承継税制の特例」を使えば、相続税を免除できる場合もあります。
さて、こんな財務状態になると、借入も現実味が一気に増しました。信用保証枠(無担保8000万円まで)なら、5000万円の借入も十分に可能でしょう。しっかりとキャッシュを生める体質になれば、+アルファでプロパー融資を引き出して、キャッシュを潤沢にする事も可能でしょう。
適切な税理士選らびと活用法
税理士は「税務のプロ」であって「財務のプロ」ではありません。税理士試験でも、財務科目は一つもありません。受験科目は選択式なので、相続税を選択しなければ、相続税を知らない税理士もいます。
会社を成長させるのは税務ではなく、財務です。財務に長けた税理士を選らび、経営者の将来像を短期的に実現できる施策を提案させなければいけません。決して安い顧問料ではありませんので、最大限に活用しましょう。
もし、現在お付き合いの税理士が、財務アドバイスが出来ない税理士だった場合は、財務は別のコンサルタントに任せる方法もあります。むしろ、「餅は餅屋」で、経営戦略の観点から総合的なアドバイスを受けるには財務の専門家を頼るのが良いと思います。
間違っても、「節税」とうたって、無理に赤字にさせるような税理士とは付き合わない事をおすすめします。
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