生産性って何?
「働き方改革」という言葉が良くも悪くもビジネス界に定着してきました。経営者にとっては戦々恐々でしょう。個人の判断に委ねてきた有休休暇は、強制的に5日は取らせなければいけません。残業時間の規制もあります。従業員に働かせられる時間は確実に短くなります。
余談ですが、有休取得義務は公務員には適用されません。そもそも公務員は「有休」という言葉を使わず「年休」という言葉を使うようです(職場によって違うかもしれませんが)。私の知り合いの公務員が、上司に対して「部下に有休5日間を取らせないと違法になる!」と噛みついたらしいのですが、正しいようで間違っています。。。上司からは間違った情報を広めるな!とこっぴどく怒られたようです。それはさておき、、、
経営者としては、たとえ労働時間が短くなっても、今までと同じ、いやそれ以上の売上をあげなければ生き残っていけません。今まで必死で踏ん張っていた経営者としては理不尽に思うかもしれませんね。
前置きはさておき、
タイトルにある「生産性」とは、投下した労働量に対してどれだけ生産したかです。
同じ労働量を投下した場合、より多くの生産量をあげた方が良いのは当たり前です。
投下労働量は、「人件費」や「人数」「労働時間」などに置き換えると様々な観点で分析出来ます。
生産量も「数量」「粗利」「売上」などに置き換える事ができます。
一人当たりの生産数量、時間当たりの売上高などなど。
労働分配率
今ほど、様々な数値に置き換えが可能だと言いましたが、数値によっては測定しにくい場合があったり、経営の観点からはあまり意味が無い場合もあります。
例えば「労働時間」は、その集計に手間と時間が掛かります。正確ではない場合も多々あります。
「売上」はとても集計しやすい指標ですが、変動費率(材料費など)が高い業態の場合、売上が10%伸びた!と言っても、手元に残るお金は微々たるものだったりするのであまり良い指標とは言えません
そこで、私が最近おすすめしているのは「労働分配率」です。
労働分配率とは、「付加価値額に占める人件費の割合」です。
【計算式】 労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額
この「付加価値額」も様々な考え方があるのですが、下記のように考えると分かりやすいです。
【計算式】 付加価値額 = 売上高 ー 変動費
いわゆる「粗利」という部分です。専門用語では「限界利益」と言いますが、これ以上は儲けられない限界の利益です。何を変動費にするかは、自社で基準さえ決めれば特に決まりはありません。
(注意)
製造原価内訳を採用している企業では、決算書における売上総利益とは異なります。
製造原価内に人件費や固定費が入っているので、売上に変動する経費だけを変動費としてください。
人件費には役員報酬や福利費・厚生費も入れて下さい。
纏めると下記になります。
【計算式】 労働分配率 = 人件費 ÷ 粗利
図にすると下記のようになります。
労働分配率の使い方
1.数値の確認
計算した数字(パーセント)を見て下さい。概ね、50~70%くらいでしょうか?
この数値は、低ければ低いほど良いです。つまり、少ない人件費で大きな粗利を稼いでいる事になります。
50%くらいになると、かなり生産性が高いと言えます。
私の肌感覚的には、60%前後が一般的で、小規模になると60%~70%くらいです。
もちろん、業界・業態や扱っている製品にもよってかわりますが、まずはこの数値が高いか低いかを見る事で、自社の生産性を客観的に知ることができます。
2.改善検討
次は、この数値を1%、2%、3%と改善する方法を考えます。もちろん、人を減らしたり、残業を減らす事で人件費を下げる事は可能です。ですが、私の提案としては、まずは人件費を固定とした上で、いかに粗利を増やすか?を検討して欲しいと思います。
粗利を増やすには、①変動費率を下げる、②売上を上げる、しかありません。
しかし①、②をそれぞれ分解すると、
①変動費率を下げる
→A.材料単価を下げる
→B.ロスを減らす(歩留を改善する)
②売上を上げる
→C.単価を上げる
→D.新規受注を増やす
→E.リピーターを増やす
など、少なくとも5つの方向性が考えられます。また、それぞれの方向性も細かく分解することで具体策を検討できます。
C.単価を上げる
→C-1.単価の高い新商品を投入する
→C-2.既存商品の受注価格アップ
→C-3.低価格商品の廃止
→C-4.新たな価値・サービスを付け加えて売価をあげる
いろいろ考えられますね!
まとめ
数字の分析手法は様々です。私達コンサルタントとしてはそれらを知っている必要がありますが、経営者さんとしては、必ずしも知っている必要はありません。毎月確認すべき指標だけを知っていればいいのです。その指標として、この労働分配率はとても有効だと思います。
ただ利益の増減だけ追いかけていても、テストの点数を見ているのと同じです。どの問題が正解したのか間違ったのか、を知らなければ、いつまでたってもその点数しか取れません。是非、普段の経営分析に労働分配率を加えてみて下さい。
労働分配率の計算や活用方法が分からなければ、お気軽にご相談ください。
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